第5回 日旅国際旅行社有限公司 董事長/総経理 太田 千秋さん
太田さんのご紹介
太田さんは、相馬市のご出身で、1977年に(株)日本旅行に入社。東京西支店(新宿地区)支店長、東京東支店(日本橋地区)支店長、シンガポール現地法人社長等を歴任され、2004年4月より中国現地法人立ち上げのために上海へ赴任。シンガポールでのご経験を活かしながら同年10月22日に立ち上げ、現在は董事長として活躍されています。
中国進出の理由
(株)日本旅行は1905年に創業し、2005年には100周年を迎えた、日本で最も歴史ある旅行会社です。中国大陸との関わりも古く、今から約80年前の1927年に「第1回鮮満視察団 15日間 270名参加」という取扱い記録が残っているそうです。
日本の高度成長期に海外旅行に行く日本人が急増しましたが、現地での手配や受け入れ体制を充実させるため、観光客が多く訪れる国や地域には現地拠点を設置していくという方針の下、世界各国に拠点を設置し、今や、世界15ヶ所の現地法人、28ヶ所の支店等があるそうです。
そのうち、中国に関しましては香港から着手し、1976年に香港駐在事務所を開設、1980年には香港現地法人を設立しました。大陸においては、1985年に北京駐在事務所を開設、1989年に上海駐在事務所を開設し、2004年に中国現地法人(在上海)を設立し、現在に至ります。
先に紹介したとおり、太田さんは、中国現地法人立ち上げのために上海へ赴任されました。2004年の4月に赴任され、同年10月には日系独資第一号として設立を果たしておりますが、太田さんに言わせると、「駐在事務所での蓄積があったこともあり、もっと早くから本格的な事業展開をしたかったが、独資としての前例がなく、また、各種の制約やリスク等の問題もあり、なかなか思うようにできなかった。」とのこと。旅行業の中国進出に関する制約の多さや道のりの長さを実感させられると共に、太田さんのご苦労及び志の高さを垣間見ることができます。
ところで、何故、北京ではなく上海に中国法人を設立したのかとよく聞かれるそうです。これについては、「上海の中国での経済的先進性は、近い将来世界をリ?ドするようになり、中国ではもっとも多様かつ潜在力のあるビジネスチャンスが生まれる可能性が高い」からだそうです。上海は、中国経済の中心であり、交通アクセスの良さに加え、在留邦人が多いことから、潜在顧客も多いという判断です。
現在の業務展開
同社の主たる営業内容としては、【1】日本発中国全土への旅行手配、【2】上海発中国全土への国内旅行の主催及び手配、【3】中国発訪日旅行の企画・コンサルティング・手配・総括業務、【4】上海発海外旅行の企画・コンサルティング・手配・総括業務です。
言い方を変えますと、日本人の訪中旅行の現地手配(【1】)、中国(上海)発の国内旅行の現地手配(【2】)、中国(上海)発の海外(訪日)旅行の企画等(【3】【4】)となります。特に後者については制約が厳しいですが、現地の旅行会社等と提携することにより、業務を行っているとのことです。
日本から中国への送客は、親会社である(株)日本旅行から年間約8万人あり、その内、約半分の4万人程度は同社が直接取り扱っています(残り半分は別の関連会社や合弁会社などが取り扱っています)(【1】)。また、同社が直接取り扱う中国国内で発生する旅行取扱い(海外旅行も含む)人数は、年間8千人ぐらいにまでに成長してきているそうです(【2】【3】【4】)。
また、業務量の比率としましては、【1】の日本人の訪中旅行に関する現地手配が9割を占めますが、【2】【3】【4】の中国(上海)発の旅行者が増えていることから、こちらの比率が徐々に上がってきているとのこと。中国にある日系企業の従業員向けなど、中国在住の邦人需要が増えているためです。
将来的にはこの取扱い人数比率を50対50にしていくのが目標で、中国(上海)発の旅行も力を入れていくとのこと。中国在住の皆様におかれましては、帰国の際や旅行を計画される際には、太田さんに一度ご相談されてはいかがでしょうか。
中国ビジネスのポイント(太田さん談)
- 現地業務から感じること
日本にいた時は主に日本人観光客を諸外国に送り出す業務に携わっていましたが、前任地のシンガポール駐在時からは主に日本人観光客の受け入れ業務が主となりました。ここから率直に感じることは、「日本人は世界中で最も細かく、複雑で、難しい民族」であり、「特殊な民族性を持っている(これは、見方を変えれば美点かも知れませんが)」ということです。
日本人と中国人を比較しての寸評はいろいろ耳にします。お互いに腹立たしいことや呆れることも多いかもしれませんが、決定的な違いは「日本人は面と向かって率直にものを言わない民族」だと感じることです。これは日中の違いとして捉えるものではなく、日本人のみ特有のものだと私は思います。欧米人や中国人をはじめ、全世界でみると思ったことを率直に言う民族がほとんどですが、日本人のこの特殊性は、これまで多くの日本人観光客を受け入れている中で、たくさんの具体例を挙げることができます。極端な言い方をすると、日本以外の外国人が特殊なのではなく、日本人のみが特殊なのだと考えており、このような認識が私どもの業界の出発点だと思っております。やや大げさですが、経営機軸の1つとも考えております。 - 現地社員とのかかわり方
中国に進出している日系企業は、多くの中国人社員を抱えて苦労が多いことと思います。この大部分は恐らく、日本の企業の考え方(=特に旅行業では日本人の民族性)を中国人社員に理解してもらうのに時間と根気を要することに起因しているのではないかと思います。
中国人の民族性は十分に理解し配慮していきたいと思っておりますが、主なビジネス対象が日本人となる当社は、徹底的に日本人の考え方、習慣、嗜好に適合していかないと勝ち残れません。言い換えれば、企業人としては中国人であることを捨て、お客様志向に合わせていく必要があるのです。(逆に、中国人のお客様を海外に送客する場合には、中国人の民族性を十分に理解して手配しないととんでもないことになります。)
当社は中国各地から満遍なく社員を集めておりますが、経験の浅い社員からはよく「これはお客様が間違っている」「日本人の考え方は本当にわからない」とよく耳にしました。それに対してはこう言ってきました。
「日本人の抱いている要望をよく汲み取り、中国の旅行素材を上手にマッチングさせて(コンサルティングして)いこう)」(もちろん、あまりに理不尽な要求は別ですが。)
また、なかなか簡単には理解してもらえないので、いろいろな言い方をしてきました。
「個人の考え方や感情で仕事をしないように⇔企業の考え方(=お客様本位)で仕事をしよう」、「企業人の人格は個人の人格とは違う。仕事をしている時は企業人の人格で、即ち、お客様本位の人格でやろう。」「仕事を離れたら、1個の人間として付き合おう」
そして、私自身が道に迷った時は、いつも自分にこう言い聞かせます。
「中国、理解すれど同化せず!」、「中国流駆け引き、交渉、辞さずですが、仕事の結論は、グロ?バルスタンダード!(安易な妥協はしない/不当な要求には屈しない)」
その他
太田さんは、自然が好きで、植物鑑賞やハイキング、魚釣り等、多彩な趣味を持っておられます。退職後には、自然に囲まれた生活をするのが夢とのこと。
また、仕事で得たご経験を活かし、日本の良さを外国人に伝えていきたいとおっしゃっておりました。国家間の友好関係を築いていくためにも、このような活動は大切なことだと感じました。
最後に、太田さんからのメッセージをお贈りします。
「福島県人の県民性は、真面目で粘り強いとよく言われます。中国ビジネスに適しているかどうかは一概に言えませんが、このような性格の人は、ストレスが溜まりやすい傾向にあるのかもしれません。それぞれ、自分に合ったストレス解消法を見つけて意識的に実行し、元気にやっていきましょう!中国を去る時には晴れ晴れとした笑顔で次の赴任地へ行けますように!」
会社概要
- 名称:日旅国際旅行社有限公司((株)日本旅行中国)
- 設立年月日:2004年10月22日 営業開始年月日:2004年12月1日
- 資本金:400万人民元 ((株)日本旅行が100%出資)
- 従業員数:33名 (日本人:9名、中国人24名)
- 連絡先
〒200336
中華人民共和国上海市虹橋開発区興義路8号 上海万都中心大厦710室-712室
Tel:021-5208-1712 Fax:021-5208-1745
http://www.nihonryoko.com.cn
2007年7月2日
福島県上海事務所 中村 敬

