駐在員雑感(第42回)「娘と点菜」

上海に来て早4年が経ちますが、いまだにうまく行かないのがレストランでのメニュー選びです。中華料理の名前は、同じような料理でも、店によって呼び名が違っていたり、日本で食べているものと同じイメージで注文すると全く違ったものだったり、さらに、私の中国語に問題があると思いますが、材料の野菜や魚の名前がわからずに、四苦八苦しております。

私がはじめて中国に来た10年前、子供が日本式の焼き餃子が食べたいというので「餃子」を注文したら、大きなお椀に入った「水餃子」が出てきて、しきりに注文したものと違うと言ったことを覚えております。(ちなみに日本式の餃子は中国語で「鍋貼」といいます。)

最近では、メニューに写真が入っていることが多く、また日本語のメニューもあり漢字だけのメニューよりも料理をイメージしやすくなっております。

しかし、写真ではおいしそうに見える料理も、いざ注文して食べてみると、なんとも微妙な味だったり、せっかくの日本語メニューも、記載されている日本語が正しくないため、かえって混乱したりと悪戦苦闘の連続です。

先日も、久しぶりに家族で食事に出かけましたが、注文を失敗し、悲惨なことになりました。

その日、妻が中華料理が食べたいということで、以前に行ったことのあるレストランに行くことにしました。店に入り、メニューを開いてみると、料理の写真が載っており一安心。さらに、日本語のメニューはあるかと聞くと、あるとのことで、「写真入」、「日本語」、これで注文は問題ないと思い、写真でおいしそうに見え、しかも値段が安い「魚のとろみあんかけフライ」「豚肉の唐揚げ」「マーボ茄子」「セロリといかの炒め物」「春巻き」「焼きビーフン」を注文しました。

一見いかにも日本人好みのおいしそうな中華料理に見えますが、出てきた実物は、香辛料のせいなのか想像していた味とはかなりかけ離れておりました。

娘は、焼きビーフンを口にして「うわあ、なにこれ、ダメ・・・」と食べるのをやめてしまいました。また、「豚肉の唐揚げ」は唐揚げというよりは、「ホットケーキミックスで揚げた豚肉」といった感じ。「マーボ茄子」は、注文の際に「辛いのか?」と尋ねると「あまり辛くない」と店員が言うので、「辛くしないで」と念を押して頼んだにもかかわらず、非常に辛くて、しかも香辛料が強く、子供は全く食べられず、私も2口程度でダウン。妻が少々がんばるも完食は無理でした。 「春巻」と「魚のフライ」はかろうじて食べることができました。

私は、子供があまりにかわいそうに思え、チャーハンでも注文したらというと、彼女たちは、なんと日本食が食べたいと言い出し、となりの焼鳥屋(日本食もある)へ行くことになってしまいました。テーブルの上に残されたあまり美味しくない「豚肉の唐揚げ」「マーボ茄子」が、少々もったいないと思え、また注文した責任も手伝って、これらの料理を「打包」(中国では残った料理を持ち帰る習慣がある。これを「打包」という。)し、中華料理店を後にしました。滞在時間が約30分。非常に短時間であったため、店員さんが怪訝そうな顔で見送ってくれたのが印象的でした。

その後、家族で焼鳥屋に入ると、土曜日のせいかなんとその店は満員。少々待とうかと思いましたが、当分空きそうにないので、残念ながら焼き鳥をあきらめ、あえなく帰宅することとなってしまいました。娘は二重のショックだったようです。

帰りのタクシーの中で、娘たちは、どうにも空腹が我慢できなかったようで、自宅近くのスーパーでカップ麺を買って帰宅することになってしまいました。せっかく外食したのに、結局最後は自宅でカップ麺とは、なんとも親として情けない限りでした。

中国で生活していて、日本人の子供たちの口に合う中華料理は、意外と少なく、限られているとように感じます。我家は点心類(小龍包、春巻き、シュウマイ、鍋貼など)やチャーハン、焼きそば、それから海老料理など、日本でも食べられるようなものばかりを食べています。なんとももったいない感じがしますが、現実は我家のようなケースが多いと思います。

ともあれ、レストランでの「点菜」がうまいかどうかは、駐在員のその土地での経験を知るひとつの目安かもしれません。今日の私の「点菜」は、駐在員として失格だよと娘に言われたような感じがし、自分の経験不足を痛感し、また中華料理の奥の深さを実感した日でした。

翌朝、私は反省をこめて、昨日レストランで「打包」した料理をひとり、朝ごはんとして食べて出勤しました。昨日にもまして微妙な味でした。

2007年12月21日
福島県上海事務所 安達和久