駐在員雑感(第25回) 「どびっきりの笑顔」

最近、香港に出張した。香港に行くと、なぜかほっとする感じがする。
これはなぜだろうと思った。確かに車は右ハンドル、左側通行で、日本と同じだから安心するというわけではない。よくよく考えてみたところ、人々の「笑顔」である。
空港の係官、タクシードライバー、ホテルのフロント、飲食店の店員など対人関係において、「笑顔」があるのだ。香港も上海同様に、人が大勢で、繁華街は人、人、人で雑然としているが、上海との大きな違いは、人々の「笑顔」のような気がする。この「笑顔」が私に安堵感を与えてくれたのだろう。
もちろん上海にも笑顔はある。しかし、まだまだ、上海に暮らしていて、人の笑顔にほっとしたという経験は少ない。これは、香港からの帰りの飛行機内でも痛感した。飛行機は中国の東方航空。予想通り、客室乗務員に笑顔はない。自分は上海人よといわんばかりに、上海語できつい顔をしてしゃべっている。(これは、上海語がわからない私の偏見かも知れないが?)お茶のサービス時にも客室乗務員に笑顔はない。「もう少し笑えば、もっと美人なのに・・・・。そして客も喜ぶのに」と思ったのは私だけだろうか?
このほか上海では、タクシーに乗っても、デパートやスーパーで買い物をしても、ほんの一部を除いては、「笑顔」に癒されるということは本当に少ない。
私の住んでいるマンションの中には、小さな買い物スペースがある。そこの店員にも、まったくといってよいほど笑顔がない。機械的につたない日本語で「○○円」と対応する。せめて「○○円です。」と「です。」をつけて、少々笑顔を浮かべて欲しい。
また、事務所ビル1Fのコンビニでは、中年のおばちゃんたちが、笑顔など微塵もなく、言葉だけは「歓迎光臨」(日本語では「いらっしゃいませ」の意味)と言ってはいるが、いかにも仕事したくないという態度でレジを打っている。日本のような丁寧な対応は端から期待できないが、作り笑いでもいいから「笑顔」で対応して欲しいものだ。
しかし、最近、毎日「とびっきりの笑顔」に出会えるようになった。
その笑顔の主は、同じマンションに住むドイツ人夫と日本人妻の間に生まれた2人の幼い子供たちである。私は、マンションから出る通勤バスで出勤しているが、そのバスに2人の子供の父親も、いっしょに乗って出勤する。2人の子供は、兄が4歳、妹が2歳。
毎日父親の出勤を見送るため、バスの通り道まで、母親と一緒に3人で出てくる。兄は幼稚園に行くための道具を持ち、妹は母親の押すベビーカーに乗っている。
バスが、その子供たちの前を通る時、彼らはバスに向かって「とびっきりの笑顔」を浮かべ大きく手を振って、父親の出勤を見送っている。私もこの父親のおこぼれに預かり、彼らの笑顔から元気をもらって出勤することができる。無邪気な、本当にうれしそうな2人の子供の笑顔は、他人の私が見ても愛くるしく、1日がんばるぞという気持ちになる。まさに、世界中で一番すばらしい「笑顔」なのだろう。
最近は、中国内では、上海のサービス、接客態度のレベルは上がってきていると思う。
上記子供たちの笑顔に対抗できるものはないと思うが、せめて、「笑顔」での接客対応が加われば、これまで以上に、多くの人々にとって、快適な上海になること間違いなしだろう。

2006年11月6日
福島県上海事務所 安達和久