駐在員雑感(第17回) 「花見」

上海もすっかり春らしくなってきた。事務所道路向かいの「新虹橋公園」には、2004年7月に福島上海定期便就航5周年を記念して、桜の木3本が植えられた。真夏の暑い時期に植樹したため、根付くかどうか心配されたが、しっかりと上海の地に根を下ろし、今年もきれいな花を咲かせた。
今日現在で花は5分咲き程度だろうか?上海の地で見る桜も感慨深いものがある。
思えば、上海赴任後しみじみと春を感じたのは、今年が初めてのような気がする。
2004年4月に赴任し、あわただしく事務所設立の準備を行い、2005年は初めての年度末ということでこれまたわけがわからないままに春が過ぎてしまった。
もともと春が短い上海ではあるが、今年はこの3本の小さな桜の花を見ながら、福島の美しい桜を想像し、少しでも春を味わおうと思う。
最近、日本人と桜の関係について、日本でベストセラーになっている「国家の品格」という本に大変興味深い箇所を見つけた。
それは、「日本人の自然に対する繊細な感受性」についての記述である。
以下『』部分は同書からの引用。
『悠久の自然と儚い人生との対比の中に美を発見する感性。これが「もののあわれ」の感性で日本人はとりわけ鋭い。この感覚の鋭さの一例が日本人の桜に対するものである。』『日本人は桜の花の咲くたった3、4日の美しさを味わうために日本中に桜の木を植えている。この3、4日に無上の価値観をおく。3、4日に命をかけ潔く散ってゆく桜の花に人生を投影し、そこに他の花とは格別の美しさを見出している。』
確かに、桜はただ単に「きれい」という以上に何か特別の感じがする気がしていた。それがこの筆者のいう「もののあわれ」ということなのかと思った。異国の地で福島県にゆかりの3本の桜を見て、改めて日本人の感情を発見することができたことがなんともうれしい。
中国人の間でも、この時期は日本への「花見」のツアーが人気だそうだ。展示会に出展して、ブース内に三春の滝桜や桜の鶴ヶ城のポスターを展示していると、中国人はその前で写真を取って、「大変美しい」と言って帰ってゆく。しかし日本人のような「もののあわれ」という独特の感性ではなく、ただ単に美しいという感覚のみで桜を見ているのだろうと思う。
今年の春は、公園の3本の桜を眺めながら「もののあわれ」を感じたいと思う。上海で販売が開始された福島の地酒を飲みながら・・・・・。

2006年3月25日
福島県上海事務所 安達 和久