駐在員雑感(第16回) 「駅」

旧正月が明けた2月10日、出張先の杭州から上海に戻るため、鉄道を利用しようと考えた。しかし、事務所のスタッフから、「この時期駅はたいへん混雑し、安全上も問題があるので、列車での移動はやめたほうが良い」と言われた。しかし、春節の駅も体験したいと思い列車での移動を選択した。
 さすがに、杭州駅(乗車駅)も上海駅(下車駅)も、スタッフの言うとおり、大きな荷物を持った人々でごったがえしており、一種独特の雰囲気をかもし出していた。
中国では、旧正月前後に帰省ラッシュがあり、多くの出稼ぎ労働者が1年間の稼ぎを持って田舎に帰り、旧正月をふるさとで過ごし後、また上海に戻ってくる。さらには、また新たな出稼ぎ労働者も都会を目指す。その他、最近では国内旅行をする中国人も増えているようで、駅には大勢の人が集中し、中国版の民族大移動(中国語では「春運」と言うらしく)となるのである。日本に例えるならば、年末年始と3月末の人事異動の時期が一緒に来たような感じであろう。
ところで、中国の駅を利用して、私は「駅」という場所に関する日本と中国のイメージの違いを改めて感じた。
日本の場合、「駅」「駅周辺」と言えば、その街で一番の繁華街(今は中心市街地空洞化の問題でそうとは言い切れないが)であり、多くの人が気軽に集まり、その周辺では買い物をしたりする場所というイメージがある。
しかし上海の人(当事務所の職員の感想)にとって、「上海駅」「駅周辺」は、外地人(上海以外の人)が仕事を求めてやってくる場所で、汚くて、治安が悪く、あまり近づきたくない場所というイメージがあるようだ。確かに、なんとなく駅周辺は、一種独特な「におい」というか「風景」があり、長居をせずに、早くその場を立ち去ったほうが安全という感じがしたのも事実である。かつて、この上海駅の近くに日系のスーパーがあり、買い物をした経験があるが、今では業績不振からか撤退している。これも立地条件が原因だったのだろうか?やはりこの駅周辺に高級なスーパーは似合わないと感じる。
上海に限らず、よくよく考えてみれば、「ターミナルステーション」といわれる大きな駅は、ニューヨークやパリもあまり治安がいい場所ではなく、繁華街や買い物ゾーンは駅から離れている。日本の東京駅や各地方都市の駅が例外なのかもしれない。
1日の利用者が約15万人の上海駅(東京駅は約37万人/日)。
上海人は、用事がないとあまり近づかないという上海駅。
しかし、荷物を抱え、大都市上海に降りたち、上海の苦しい部分の仕事を支えている人々にとって、この上海駅はまぎれもなく出発点なのだろう。
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上海駅の風景
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上海に仕事を探しやってきた人々
2006年2月13日
福島県上海事務所 安達 和久