駐在員雑感(第14回)「福島のマイスター育成」

12月に福島県内の工業高校3年生4名が上海の製造業の現場等を視察した。
福島県の製造業も空洞化がさけばれて久しい情況であり、人件費の割合が高い工業製品の多くは、中国で生産されるようになっている。
このような状況で、将来製造業の第一線で働くこととなる若者に、「世界の工場」中国で何が起こっているのかを自分の目で見て、肌で感じ、日本では何が必要なのかについて考えてもらうことは大変有意義なことであると思う。

参加した生徒たちは、各工場を訪問し、中国人の工員が、黙々と長時間立ったまま作業する姿に接しどのように感じただろうか?
また、中国の工員(中卒、高卒)の賃金は1ヶ月おおよそ1万円から2万円程度、一方研修に参加した生徒たちの卒業後の初任給は15万円程度であり、この差についてどのように考えただろうか?

ある工場では、「君達は、彼ら(中国人工員)の15倍働けますか?15倍の製品を不良品なく製造できますか?」との現実を突きつけられるような問いかけもあった。
この企業の方の言葉を、生徒たちは半分冗談のように受け取った感じがしたため、私は車の中で「これが現実です。皆さんが15倍働けないというのであれば、皆さんはどうすればいいと思いますか?」と問いかけた。
残念ながら答えは返ってこなかったが、その答えは、空洞化対策の基本である「高付加価値製品の製造」「技術力の向上」等により、とどまることをせず、たゆまず技術革新に励み中国との差別化を行うことではないだろうか。

 

この「高付加価値製品の製造」「技術力の向上」を実現するためには、現場で経験を積んだ職人の技術は欠かせない。製造業の現場では、機械では調整できないような微妙な部分の最終調整は「現場の職人の技」によるところが大きいと聞く。これらの職人の多くは、現場のたたき上げで、この道一筋で努力して技術を身につけた人が多い。今回参加した生徒たちは、まさに、この職人の後継者的存在なのではないだろうか。
いち早く現場に出て仕事の経験を積み、他人には真似のできない技術を身につけ、付加価値の高い製品を製造できるようになってもらいたい。

生徒たち4人は、今回の研修を通して、通常の高校生が修学旅行で体験する中国とは一味ちがう中国を体験したと思う。中国と日本の産業の共生をいかにすべきか等をいきなり考えることは難しいと思うが、中国人がどのような環境・条件で働いているのかを自分の目で実際に見て、日本の現場でどのような意識で働かなければならないか、製造技術の高度化がいかに大切なのかについて感じてくれたと思う。
そして、きっと将来彼らが「匠の技術」を身につけ福島県の「マイスター」となり製造業の現場を支えてくれると信じている。

おわりに、今回の事業実施にあたり、企業訪問にご協力いただき、さらには社会人としての心構え等についてもご指導いただきました多くの皆様方に心から感謝申し上げたいと思います。

2005年12月10日
福島県上海事務所 安達和久