駐在員雑感(第11回) 「あれから1年」

福島県上海事務所が開設されて1年になる。この1年間、多くの方に支えられ、ご協力いただき1年を迎えることができた。ご協力くださった多くの方々には心から感謝申し上げたい。
この1年、様々な活動を行ってきた。事務所を訪れていただいた方も1年で約1,000人に達したが、福島県民にとって上海での活動拠点としての役割をどれだけ果たせたかが気になるところである。
そもそもの上海事務所のミッションは、「チャレンジ」である。新たな分野への挑戦、「失敗を恐れずにまず1歩前に」。この精神は常に心の中に持ち続けてきた。
開所記念レセプションでは、福島の桃の輸入に失敗し、いきなりの躓きとなったものの、その後福島のナシや地酒の展示会への出品、販路開拓への支援、ジェトロの協力を得ての上海でのテストの販売の実施等をおこなうことができた。
観光面では、福島と東京を周遊するツアーにより約300人の中国人が福島空港から日本へやってきた。福島空港がまさに中国からの訪日観光客にとって「北の玄関口」になったのである。
そのほか、会津大学と上海大学の技術交流の開始、安積高校と上海の高校との交流事業の実施、上海福島県人会の会員がこの1年で2倍に増え活動も定着した。
やはり難しかったのは、中国企業の福島県への投資誘致、企業誘致である。これにはいまでも大変苦労している。展示会・見本市等での福島県のPR等を行うものの、企業を引き付ける日本の他地域と明らかに優位に立つ条件が乏しい。今後も更なるPRや斬新なアイデアが必要となると考えている。
一方、この1年で中国国内の情況も大きく変わっている。
4月の反日でデモの発生では、中国リスクを露呈し、日本人観光客の一時的ではあるが激減した。また、7月の突然の人民元切り上げでは、中国がこれまでの世界の工場から世界の市場となるべき新たな第1歩を踏み出したことになる歴史的に大きな変化であった。
今後も中国は規制緩和等が繰り返され、成長、近代化してゆくことは間違いないようである。
福島県は、この中国とうまく付き合い、相互に利益を享受しあえるような関係でなくてはならない。
最近では、製造業の中国進出相談のみならず、サービス業(飲食業や食品の貿易等)に関する相談が寄せられることが多くなっている。
福島県の企業の方々には、上海と言う「新たな市場」を再度認識いただき、新たな分野へのチャレンジを試みてほしいと思う。
福島県は多くの面で環境的にも恵まれており、何も苦労して新しい分野に挑戦しなくても現状でまったく困らない、リスクをとる必要はない、という考えの方も多いと思う。
確かに、リスクの回避は重要であり、中国市場は参入には大変な障壁があり、様々な問題があることは事実である。しかし、中国は着実に日本をキャッチアップしている。日本は中国に追いつかれないようにさらに、前進をしなければならないと思う。前進というのは20世紀型の開発型、規格大量生産型の前進という意味ではなく、知的に付加価値の高い商品を常に生み出してゆくような前進が求められるのである。高付加価値な製品の製造、新技術の開発、その土地でなければ生産できないような食品の生産等。現状に満足せずにまずは1歩前に出るような方針で行きたいものである。
また来年2006年の7月にこのコーナーでどのようなことが書けるのか、また胸を張って上海事務所の存在が皆様に認めていただけるような存在となっているよう前進してゆきたい。

2005年7月25日
福島県上海事務所 安達和久