駐在員雑感(第10回)「久しぶりの福島で感じたこと」

久しぶりに福島に帰省する機会を得た。福島空港に到着。周りの緑がとても新鮮に感じられ、心がリフレッシュする瞬間である。

私は、福島市の産業振興センターでの業務のため、福島駅西口の「コラッセ福島」に向かった。
「コラッセ福島」から見える残雪の吾妻、安達太良の山、そのふもとに広がる緑は、福島市生まれの私にとっては見慣れたはずの風景であるが、本当にまぶしいくらい美しく感じられた。
福島にずっと生活していたならば、当然のことと感じるこの風景も、久しぶりの日本、山を見ることがない上海での生活が続くと、なんともいえない贅沢な風景と感じられるのである。
同じ福島の風景をまた新たな角度から楽しむことができたような気がして、大変得をした気分であった。

このように、福島県には地元の人が当たり前と思っているものが、本当は大変貴重で素晴らしいものであることが数多く存在するのではないかだろうか。
今後「福島県のダイヤの原石」を見つけて、その逸品を上海でおおいにPRしてゆきたいという気持ちがふつふつと沸いてきたのである。

その崇高な理念を胸に、次の打合せ場所へと移動しようとした時、悲しい現実を目の当たりにすることとなってしまった。それはタクシーでの出来事である。
次の打合せ時間に間に合わなくなりそうだったので、福島駅西口から県庁までタクシーで移動した。本来であれば、当然歩いて移動する距離であるが、日頃上海ですぐにタクシーに乗ってしまう癖がついており、何気なしにタクシーに乗ってしまった。(上海のタクシーは初乗り3Kまで10元(1元≒13円)と比較的安く乗ることができる。)

そのタクシーの運転手は、私が「県庁までお願いします。」と言うと、「あ・・・県庁までですか?」といかにもがっかりしたような、「そんな近い距離をなんでタクシーに乗るのだ!」「俺は何時間も待っていたんだ!」と言わんばかりの無愛想な対応で車を走らせたのである。
乗車拒否はされなかったからまだましと言う意見もあるが、降りる時も機械的におつりを返してきただけで「ありがとうございました」の一言もない対応であった。
確かに840円という短い距離であったが、日頃「日本のサービス業の質は上海より数段進んでいる」と上海人に対して豪語している私としては、大変がっかりしたとともに、なんとなく憤りを覚えた。
最近では、上海のタクシーでさえ、短距離での乗車拒否や文句を言う運転手は少なくなったというのに、まさか福島でこのような不愉快な目にあうとは思ってもみなかった。

今回は客が私だったからまだ問題ないと思うが、これが、「福島県を初めて訪れる観光客・ビジネス客」だったらどうだろうか?「はじめて日本を訪れた外国人」だったらどうであろうか?といらぬ心配をしてしまった。
駅を降りて乗ったタクシー運転手の印象、空港を降りて街に着くまでの道路や街並み、これらははじめて訪れる人にとってはその街を強烈に印象付ける要素である。
あのような運転手は福島ではめったにいないが、たまたま私は運がよく?(いや運悪く)その人に当たってしまったと祈りたい。せめて降りる際には「ありがとうございました」の一言が欲しかった気がする。

美しい自然、おいしい食べ物等「福島のダイヤの原石」がダイヤモンドになるには、人の力が必要である。福島の多くの人の力が結集されてはじめて、美しいダイヤモンドに変わるのである。
福島の地場の資源に誇りを持ち、一人ひとりが福島の代表であると言う自覚を持て行動することが大切なのだと実感した。

蛇足ではあるが、そのほかのところで乗車したタクシーの運転手さんの対応は、「さすが日本」という素晴らしい対応であったことを付け加えておきたい。

2005年6月13日
福島県上海事務所 安達和久