駐在員雑感(第7回) 「上海の旧正月」

上海で春節を過ごした。中国人にとって春節は1年のうちで最も大切な時である。
多くの人は家族一緒に家でゆっくりと過ごしたり、親戚や友人宅を訪問し、歓談したり食事をしたり過ごすようである。日本の正月の過ごし方と似ている。

春節の定番は、「爆竹・花火」である。多くの家で爆竹や花火を鳴らす。
正月の「初一」(中国語で旧正月の1日を「初一」という。)の0時近くになると多くの家で爆竹や花火を鳴らす。気の早い人、待ちきれない人たちは大晦日8時頃からけたたましい音をたて爆竹を鳴らす。花火のほうは意外ときれいである。花火といっても日本の夏に行う花火とは比べ物にならないしけたものであるが、それでも連続して10発以上打ち上げる人もおり、とてもきれいでおもしろい。

我が家は上海市中心部からは少々外れたところにあるのだが、周辺の住民が思い思いに爆竹や花火を鳴らして大変にぎやかであった。あいにくの雨ではあったが、十分中国の旧正月を体験することができた。あまりたくさんの花火を打ち上げるものだから周囲が煙で白くなり、まるで霧が立ちこめたようにけむってしまった。
もっともゆっくり休みたいと思う外国人(中国人でそう思う人は少ないだろう。)には確かにやかましいかもしれない。私が、このやかましいがしかし面白い爆竹・花火の体験を中国人にしたら、今年はこれでも爆竹が少ないほうであるという。なんでも今年はあまり縁起がよくない年であるというのだ。
それは、「立春」の日にちに由来するようである。

今年2005年の「立春」は2月4日であった。しかし旧暦の「正月初一」(日本の元旦)は2月9日であり、立春の後に「正月初一」が来ており、旧暦の2005年は春がない年となり、縁起がよくないということになるという。それで、正月を祝うに際してもあまりよくない年だから爆竹や花火も少なかったそうである。また結婚にもよくない年といわれているようである。

その他春節の上海で感じたことが2つある。
ひとつは、「人手不足」である。飲食店やおみやげ物屋等の店員さんはみな上海以外からの出稼ぎであり、中国人にとっても最も大切なこの時期は多くの人が故郷へ帰る。
よって、飲食店に行っても店員さんが少なく普段よりサービスがよくなかったり、時間がかかったりする。これも正月仕方がないとあきらめるしかないのである。
働いている店員さんはふるさとにも帰らず一生懸命働いているのであるから、少々の不便は我慢しないといけないと自分に言い聞かせた。しかし、よくよく考えると、中国で国が定める休暇(労働節、国慶節、そして春節)に働いた場合は、通常の賃金の3倍を支給することとなっていおり、この時期少々我慢して働いたほうが金銭的には得なのである。春節に働いている人がどのように考えているのかわからないが、やはり商売の鉄則は人が遊んでいるときに働くということに間違いはないようである。

それからもうひとつ、「渋滞がない」こと。
普段あんなに渋滞している高架道路や主要道路がまったく混んでいない。
特に、片側3車線の高架道路がこんなに広かったのかと今更ながら驚いた。普段がこんなに快調であったならさぞや渋滞のイライラ、ストレスもたまらないだろう。
上海において高架道路を高速で走りぬけることができるのは「春節」と「国賓」くらいではないだろうか。タクシーもすぐに乗ることができるし渋滞もない。まさに快適な移動ができる時期であった。

最後に、今年の春節は大変寒かった。2月12日にはまた上海で雪が降り、うっすらと積もった。私の住んでいるマンションの住人はほとんどが上海を脱出しおり、誰もいないマンションに私だけが残され、部屋も芯から冷え切っていた。寒さが骨身にしみた上海の春節であった。

2005年2月15日
福島県上海事務所 安達和久