駐在員雑感(第50回)「経済成長と共に増加する上海日本人学校」

 日本人学校とは、日本国外に住む日本人子女を対象に日本国内の小・中学校と同等の教育を行う機関を言い、文部科学省から教員が派遣され、通常課程とされる平日の毎日6時間程度の授業を行う全日制の学校ことです。現在、世界中には、50カ国・地域に85校の日本人学校があります。

 中でも現在最大の規模を誇るのが上海市の日本人学校です。現在、上海市には約4500社の日系企業が進出し、約5~6万人の日本人が住み、短期滞在者を含めれば常時10万人の日本人が滞在していると言われてます。上海の日本人学校は1976年2月に児童数7人でスタートしました。当時、家族を帯同していたのは総領事館員と日航社員だけでした。初めは、総領事館の一部屋で、土曜日の午後だけの補修授業校でした。補習授業校とは、現地学校での授業をカバーするものですが、上海での現地学校では言葉(上海語)が障害となり、授業のほとんどを日本人学校に頼らざるを得ない状況でした。

 〝第1次投資ブーム〟(1980年代半ばから89年頃まで)時は、中国政府の要請を受けた日本企業が中国国内に投資を開始したため、日本人駐在とその家族も増加し、生徒数も12人から82人に増加しました。〝第2次投資ブーム〟(1992年から97年頃まで)時は、鄧小平の「南巡講話」により上海の開発が加速したのを受け、輸出型企業が多く進出しました。この頃生徒数は82人から408人に増加しました。そして、〝第3次投資ブーム〟(2000年以降)時は、中国のWTO加盟、オリンピック誘致成功等により投資件数、金額も大きく増加しました。生徒数も602人から2597人と大きく増加し、2006年には、従来の虹橋校では手狭になった為、浦東校が新たに開校しました。

 設備も近代的なものとなり、生徒数も増え、一見順調に拡大してきたように見えますが、海外の学校ならではの苦労もあるようです。今年の2月、学校で使う教科書が中国当局により通関を差し止められるという事件が発生しました。税関当局は具体的な説明をしていませんが、関係者筋では〝尖閣諸島を日本領と表示していることが理由のようだ。中国が主張する通り、尖閣諸島を中国領に書き換えない限り日本に送り返すつもりらしい〟との理由だったようです。

 他にも、日本や現地の景気、現地国の政情、日本企業の現地化促進、進出企業の不振による現地拠点の閉鎖、撤退などが生徒数の激増・激減に直接影響する為、学校運営上の不安要素は尽きないようです。さらには、危機管理の面においても、SARSや鳥インフルエンザ,暴動、テロ等日本国内とは比較にならないほど不安要素が多く、皆、神経を尖らせています。海外の日本人学校は、そこが外国である以上、常に不測の事態と隣あわせであり、子供達を守る数少ない砦の一つなのです。

                                                                                                      2009年1月5日

                                             福島県上海事務所  齋藤 康