スマトラ島沖地震の中国人旅行者への影響

2004年12月26日に起きたインドネシアスマトラ島沖地震は、インドネシアを始め世界でも有数の観光地であるタイプーケット島やモルディブに大きな被害を与えた。中国人旅行者にとっても、今回多くの被害を受けたプーケット島は人気の観光スポットであり、春節を控えたこの時期、旅行先に少なからず影響がでてくる事は必至のようである。 タイは比較的ビザが取りやすいこと、ツアー価格も4,000元弱と手頃であることから、家族連れや若い女性に人気である。その他シンガポール・マレーシア等への旅行も人気であるが、タイは最も人気が高く、旅行者は年間10万人を超えている。

今回の地震により、年末のプーケットへのツアーはほとんどがキャンセルされたようだ。

各旅行社からの聞き取りによると、「元旦発のプーケットツアー90名を予定していたが中止とした。その他マレーシアやモルディブも中止した」(上海青年旅行社)。タイプーケット島に定期便を運航している航空会社関係会社では、「2つの団体で約50人がプーケット島に行く予定であったがツアーをキャンセルとし、関連するツアー代金の返還を始めた」(上海航空国際旅行社)等各旅行社ともキャンセルの取り扱いで年末年始は大忙しのようであった。また、「現時点でのプーケット島へのツアーの再開の見通しはまだ立っていない」という。(上海国際旅行社)

上海市旅遊管理委員会の幹部や多くの上海の旅行関係者は、「災難の影響はまもなく訪れる春節の海外旅行に波及することは必至である」「旅行の第一要素は安全である。旅行はいろんな事態に最も影響されやすい産業でいかなる些細な悪い話も人々の心理に悪影響を与える。今回の地震と津波は旅行者の心に暗い影を落とすことになるだろう」と語った。(新民晩報)

中国では春節を控え、通常はこの時期は各旅行社とも海外旅行ツアー商品を多く新聞等でPRしているが、プーケット島へのツアーは現在見当たらない状況である。

中国の旅行者が旅行先をどこに変更しているかについて聞き取りをしたところ「オーストラリア、ニュージーランド等が増えている。」(中国旅行社)「オーストラリア、香港、マカオへ変更を希望する人が増えている。また、国内の海南島への旅行問い合わせが増えており、価格も上昇傾向にある」(国際旅行社)と語っていた。

寒い上海からは夏のオーストラリア、ニュージーランドや国内の海南島等暖かいところへの旅行を希望する旅行者が多いようで、旅行先を日本へと変更する人は現時点では少ないようである。

上海市民の東南アジア主要国への海外旅行者数

(単位:人)
タイ シンガポール マレーシア 韓国 日本
2000年 57,899 17,794 16,770 13,807 -
2001年 47,099 20,962 19,311 14,713 -
2002年 72,600 32,200 32,400 13,200 6,200
2003年 102,000 37,800 38,100 17,100 7,799

*上記データは上海市旅游管理委員会からの聞き取りにより作成
*上記データは旅行社経由で観光ビザを取得した統計であり、ビジネスビザ・個人観光ビザ等の数は含まれていない。

春節を控えた日本・福島県への観光誘致状況について

日本政府はビジット・ジャパン・キャンペーンにより、広く日本の魅力を全世界にPRし、延べ1,000万人の訪日観光客誘致の目標を立て、積極的に各種事業を展開しているところであるが、その最重要市場のひとつが中国である。

福島県もビジット・ジャパン・キャンペーンの一環としてJNTO(国際観光振興機構)の支援を受け「中国発地方都市空港活用ツアー造成事業」等に積極的に協力し、福島県への中国人観光客の誘致に努めている。

現在、上海市の4大旅行社に協力を頂き、春節向けのツアーを3本、合計120人の中国人旅行者を福島へ誘致する計画をしている。

ツアーの内容は、福島と東京を周遊するコースとなっており、冬の会津での温泉、スキー体験、雪遊びが福島でのメインである。価格は、7,000元前後で4泊5日。

現時点では、1月16日発のツアーは残念ながら、中国の休日と重ならないため集客が難しい状況であるが、2月初旬発の2本については、上々の評判である。

特に上海の旅行者には、雪の体験と温泉、さらに東京観光が1度に体験できるツアーは魅力的と映っているようである。

中国人旅行者への訪日団体観光旅行は、2000年9月に初めて北京市、上海市、広東省の3都市について解放され、その後2004年9月にその地域が拡大され、天津市、遼寧省、山東省、江蘇省、浙江省の5都市が追加解放された。

ツアー料金も当初16,000元~18,000元程度と高額であったが、現在は5,000元~12,000元程度まで下がってきている。

訪問先での人気は東京と大阪を含むコースが主流であり、ついで北海道、九州となっており、東北地方はまだまだ知名度が低く、定期的なツアーの中には組み込まれていない状況である。

しかし、福島県は福島空港から上海に直行便が飛んでおり東京へも近いことから、最近上海の旅行関係者からは、その潜在性を高く評価する声も聞かれるようになってきている。

福島県単独ではなく、東京や大阪等の都市とパッケージすることにより、大きな潜在性があることは間違いないようである。

一方、解決しなければならない問題点が多く存在していることも事実である。

まず、移動手段の価格の高さ。福島に入り東京への移動の際、旅行者としては新幹線に乗ってみたいという要望が多い。しかし料金が高くて実現できない。それから、バスにしてもバスの借上げ料金が高く、激安ツアー等の場合は、違法な形でバスを調達する場合もあるという話も聞く。

次に、ツアーガイドについても問題である。福島を案内するガイドは福島で調達できればコストも安くなるが、そのガイドを行える人材が福島県にはいないため、東京等で調達することとなり、コスト高と福島のことを紹介できないと悪循環となっている。

中国人旅行者は、自分の出身地のガイドを好む傾向にあり、上海からの旅行者には上海出身の中国人ガイドをつけることがベストのようである。

さらに、各受入れ施設の中国語(簡体字)案内等のインフラ整備の不足があげられている。各公共施設やホテル、観光施設については少なくとも中国語の説明書の作成はすぐにでも行う必要があるようだ。

これらきめ細かいサービスを行うことにより、一度訪れた中国人旅行者は福島県を認知し、リピーターとなると思われる。

また、誘致のターゲットについても、上海だけでなく、訪日中国人観光客の約6割を占める広東省からの旅行者へのアプローチも重要である。

上海の人は「マンション」や「車」にお金を使い、広東省は「食」と「旅行」にお金を使うといわれる。また、上海の人はサラリーマンが多く、休みが自由に取れないが、広東省の人は個人事業主が多く休みを自由に取れるという話もある。

よって、今後は上海だけでなく、広東省やその他解放地区へもターゲットを広げ、旅行の展示会等へ出展する等(1月20日開催のWTF(2005上海世界旅游資源博覧会)にはブース出展しPRを予定している)により観光PRを行い知名度アップに努めて行く必要がある。

上訪日中国人旅行者の推移

(単位:人)
訪日旅行者数 うち観光客
2000年 351,788 45,270
2001年 391,384 72,118
2002年 452,420 101,299
2003年 448,782 95,991

(出所:JNTOの資料による)

資料提供:

  • JNTO上海観光宣伝事務所
  • ジェトロ上海センター
2005年1月11日
  福島県上海事務所 安達和久