新築、リフォームにご用心 ~中国のシックハウス事情~

経済発展が急速に進む上海では、住宅、オフィスビル、商業施設などの建設ラッシュが続いている。外見は豪華絢爛、しかし目に見えないところで深刻な健康被害が広がっている。それはシックハウス症候群(以下「シックハウス」とする)である。

シックハウスとは、住宅の新築やリフォームがきっかけで、目がチカチカしたり、めまい、頭痛などの体調不良、健康障害を引き起こすことで、建材、塗料、接着剤、家具などから出るホルムアルデヒドなどの有害化学物質が原因とされている。

中国でのシックハウスの被害はきわめて深刻である。中国室内装飾協会の発表によれば、シックハウスに起因する死者は中国全土で年間11万人を超え、その数は中国の年間の交通事故死亡者数に匹敵する。また、シックハウスの影響は特に子供に出やすく、上海市児童医学中心の発表によれば、白血病を患う子供のうち約8割が半年以内に自宅を新築またはリフォームしており、病気との間に何らかの因果関係があると考えられている。

中国では、シックハウスを防止するため、人体に深刻な影響がある化学物質としてホルムアルデヒド、ベンゼン、アンモニア、ラドン、総揮発性有機化合物の5項目について基準値を設けている。しかし、上海など6都市で行われた調査でホルムアルデヒドを例にとると、調査対象の93%が基準値を超えていたという。ちなみに、以前引越しをした事務所の職員たちに話を聞いてみたところ、彼らの新居ではいずれも基準値を超えていたそうである。

市場には悪質な建材や室内装飾材が蔓延している。上海市内では、建材取扱業者7万社のうち規模の大きな会社は100社あまりにすぎず、また、営業許可を取っている内装工事業者1万6千社のうち、まともな営業を行っているのは3000社程度にすぎないと言われ、残りは個人業者が低価格を武器にゲリラ的に営業をしているといわれる。売り手は利益最優先。メーカーは粗悪品を製造し、販売店もそれを知りながら販売、内装業者もそれを平気で使ってしまう。また一方で、消費者もできるだけ工事代を安くあげようと見た目さえよければ粗悪品でも安い材料を選んでしまい、施行も無資格の個人業者に委ねてしまう。よってシックハウスを誘発する悪循環が続く。また、家の内装工事だけではなく、中国の家具やカーテン、絨毯、ビニール、紙にいたるまでシックハウスの元となる有害化学物質が含まれており、この影響も見逃すことはできない。

実際に、中国で生活をするためには、自宅であれ、職場であれ、シックハウスの問題は避けて通れないといっても過言ではない。しかも、気温が上がる夏場になると室内の有害物質の揮発量は普段より30%増えるという。現在、上海で生活をする私たちが取りうる最も有効な手段は、まめに部屋の換気を行うことぐらいである。

シックハウスを改善できる技術を持った企業があれば是非中国に進出をして蔓延するシックハウスを退治していただきたい。

出典:

  • 「時事通信」
  • 「外灘画報」
  • 「上海青年報」
  • 「浙江在線」

一般住宅における基準値の比較(参考)

中国で指定されている有害物質 発生源 人体への影響 中国基準値 日本基準値
ホルムアルデヒド(甲醛) 合板、壁紙、化繊絨毯、塗料、接着剤、防かび剤 3~10年の長期間にわたり揮発を続けるのが特徴。目、鼻、のどに刺激を感じる。症状として咳、痒み、息苦しさを感じる、長期的には免疫機能、呼吸機能が低下、発ガン性あり 0.08mg/m3以下 0.10mg/m3以下
ベンゼン(苯) 塗料、接着剤 めまい、吐気、じんましん、白血病、神経障害、月経異常、流産などを引き起こす、発ガン性あり 0.11mg/m3以下 規定なし
総揮発性有機化合物(TVOC)
トルエン、ベンゼン、キシレン、スチレン等
塗料、接着剤、プラスチック、化繊絨毯、化繊カーテン 上記も含め、揮発性のある有機化合物の総量。個々の化合物の毒性をあわせもつ。 0.60mg/m3以下 暫定目標値
0.40mg/m3以下
トルエン(甲苯)
→いわゆる「シンナー」の主成分
油性塗料、接着剤 ベンゼンに比べ毒性は低い。 目、鼻、のどに刺激を感じる。疲労感、吐気、精神錯乱を引き起こす。 0.20mg/m3以下 0.26mg/m3以下
キシレン(二甲苯) 塗料、接着剤、芳香剤 ベンゼンに比べ毒性は低い。目、鼻、のどに刺激を感じる。肝臓、腎臓及び中枢神経に影響を及ぼす。 0.26mg/m3以下 0.87mg/m3以下
アンモニア(氨) 添加剤 目、鼻、のどに刺激を感じる。呼吸障害を引き起こす。 0.20mg/m3以下 規定なし
ラドン(氡) コンクリート、石膏ボード、石材 不妊症を引き起こす。発ガン性(肺ガン)あり。 400Bq/m3以下 規定なし
  1. 中国の基準については、中国衛生部等連名「室内空気質量標準(GB18883-2003.1)」を、日本の基準については、厚生労働省が定めるシックハウス指針を参考にした。
  2. 日本では、シックハウスを解決するため、2003年の建築基準法改正で、ホルムアルデヒドを発散する建材の使用制限や24時間換気設備の設置等が法律で義務付けられた。
  3. 日本の国土交通省の「室内空気中の化学物質濃度の実態調査」の結果によれば、新築住宅の場合、2004年はホルムアルデヒドの平均測定値は基準値1/3以下に収まっており、基準を超過している件数も全体の1.3%にすぎなかった。
上海事務所 大島 康範