上海事情あれこれ 「日本の新幹線車両 上海に登場」

1月28日に上海~杭州、上海~南京間の在来線で、日本の新幹線車両による営業運転が始まりました。当面は最高時速160kmでの運転ですが、4月になると最高時速は200kmにスピードアップされるそうです。今回は、最新の上海情報として、今後の中国の鉄道高速化に大きな影響を与えるであろう「上海の新幹線」について取り上げます。

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一番列車で上海から杭州へ

1月28日の午前8時30分、上海南駅発杭州行きの一番列車が出発しました。特に出発式といった盛大な式典は行われませんでしたが、駅のホームには、記念撮影をする乗客やテレビ局のレポーターなどの姿が見られました。  中国では、日本の新幹線車両は「子弾頭列車(日本語で「弾丸列車」の意味)」と呼ばれています。東北新幹線「はやて」の車両が原型となっているため、色の違いはあるものの見た目も日本の新幹線に良く似ています。列車は8両編成が2つつながった16両の編成。日本のグリーン車に当たる「一等軟座」と、普通車に当たる「二等軟座」そして食堂車が連結されています。車内の様子も日本の新幹線とほぼ同じ。グリーン車は両側に2列ずつ座席が並び、普通車は片側が2列、もう一方が3列になっています。座席はいずれも進行方向にあわせて向きが変えられ、背もたれの角度も調節できるリクライニングシートになっていますが、これは対面式の固定座席が一般的な中国の鉄道では斬新で、「航空式座席」と呼ばれ乗客や地元メディアで高い評価を受けていました。

列車が走り出すと、静かな走行音、快適な乗り心地、まさに日本の新幹線だと感慨にふけりました。通路の扉の電光掲示板では、列車の走行速度や外気温などが中国語と英語とで表示されていました。日本の新幹線とちょっと違ったのは車内で絶えず音楽が流されていること。静かな新幹線の車内に慣れている私にとっては少々うるさく感じられました。とはいえ、1時間半であっという間に杭州駅に到着しました。

「日本の新幹線」?「中国の新幹線」?

この新幹線車両、日本の報道では「日本からの技術供与」でつくられていることが明確に伝えられていますが、中国メディアの報道では日本の関与については一切触れられていません。先頭車両には「CRH」の3文字が明記されていますが、これは「China Railway High speed(中国鉄路高速)」の略称であり、今回の新幹線車両については、新型の国産列車と報道されています。これはどういうことなのでしょうか。

今回の新幹線車両は、中国の在来線高速化プロジェクトの一部として導入されたものですが、このプロジェクトの入札条件には、中国企業が海外の先進技術を素早く吸収し、国産化するための巧みな仕掛けがなされています。 まず、このプロジェクトに参加できるのは中国企業のみであるため、外国企業は、必ず中国の企業と合同で入札に参加しなければなりません。しかも、海外からの完成車での納入は受注の1割に限られ、残り2割は部品を輸入しての中国での組み立て、7割は国産化で車両をまかなうというという条件も付けられています。よってせっかく日本企業が落札しても、その車両のほとんどは中国企業に技術移転をしながら中国の工場でつくるということになります。

実際に、今回の日本の新幹線車両についても、受注を受けた60編成480両のうち、実車で納入された完成車両は3編成にすぎず、6編成は部品を輸入しての中国での組み立て、残り51編成は日本企業の技術供与により中国企業が製造を行うことになっているようです。

今後の中国の高速鉄道の行方

中国では、これまで在来線の改良によるスピードアップがなされてきましたが、今後、いよいよ日本の新幹線のような専用線による高速鉄道の整備が計画されています。北京~上海間を結ぶ「京滬高速鉄道」も今年中には着工し、2010年に開業する見込みです。

中国には、「貨比三家」という言葉があり、安く良いものを買うためには3つの店を比べるのがよいとされていますが、今回の在来線高速化プロジェクトについても、日本の新幹線車両のほか、フランスのアルストム、カナダのボンバルディアの計3社が揃って落札しており、中国はこれらの車両を比べた上で、次世代の専用線による高速鉄道の車両を発注しようと考えています。

今後とも中国の高速鉄道は世界の鉄道産業にとって大きなビジネスチャンスであると同時に、競争相手である諸外国、またビジネスに長けた中国との熾烈な駆け引きの場にもなります。

日本の優れた技術が評価され中国の鉄道の発展に役立つことは、日本人として誇らしく思うことではありますが、日本の技術協力について中国の人々には伝わっていない現状を歯がゆく思うとともに、今後、競争をあおられて日本の長年の結晶である優れた技術が不当に安く買い叩かれないこと、また、核心技術がみすみす流出するようなことにならないことを祈りながら、引き続き動向を見守ってゆきたいと思います。


出典:

  • 新聞晨報
  • 人民日報日本語版
  • 川崎重工ホームページ