<法律相談2>退職願いと労災について

<事例>

概要:工場での労災発生と退職願い取り下げについて

工員A1010に会社宛に退職願を提出した。

 退職予定は1ヶ月後の1110日。退職については、本人と会社間で既に合意いており、会社側は既に後任の採用を決めていた。

1020に工員Aが作業中、資材に手を挟み怪我をした。怪我の程度は爪がはがれ、手の平を切り3針程度縫った。

③医師の診断は全治2週間。現状休んでいる。

 

<工員Aの主張>

 結論:1010日に提出した退職願いを破棄したい(当社に継続勤務したい)

 理由:労働者が業務上負傷したことを理由に解雇することはできないはずだ。よって、1010日に提出した退職願いも無効だ。

 

<会社の主張>

 結論:1010日付で退職願を受理し合意している。よって、1110日付けで退職としたい。労災分の治療費は当然支払う。

 ※会社の工員Aに対する憶測、感情

 ①工員Aの担当業務は設計業務。左手の怪我を理由に休む必要性もないはず。

 ②医師が〝傷口からばい菌が入ると破傷風になる可能性がある。障害者10級程度になる可能性があると言っているらいしが、それは障害者扱いになり、後遺障害手当が目当であるのは明白だ。

 ③既に後任の採用も決まっており、当社としては退職願いを理由に1110日付けで退職扱いとしたい。

 

(回答)

 

1.   退職願いについて

  従業員が退職願いを提出し、会社側が認めた場合、労働契約は期限満了前に終了することになります。本件の場合、労働契約の満期日は、1110日に変更したことになります。従って、会社は当該退職願いの取り下げを認めず、予定通りに当該従業員の退職手続行うことができます。

  

2.   怪我での休みについて

    もし当該従業員の病欠証明があれば、会社はその病欠を認めなければなりません。従って、会社は「左手の怪我を理由に休む必要性もないはず」とは主張できません。

 

3.   労災について

 『労災保険条例』によると、会社は、従業員の労災保険費を納付した場合、労災発生後の1ヶ月以内に、管轄労働部門で労災認定申請を行わなければなりません

管轄労働部門が労災を認めた場合、「労災認定書」が発行されます。

怪我の治療費が労災保険の治療項目、薬品リスト等に合致した場合は、当該治療費は労災保険基金から支払われます。

 

 また、障害者として扱うためには、労災の障害認定(中国語:労働能力鑑定)を行わなければなりません。

本件の場合、当該従業員の怪我が全治した後、会社は、「労災認定書」をもって労災の障害認定申請を行います。

 障害何級と認定されれば、障害補償金は労災保険基金から支払われます。

 (もし障害10級と認定されれば、労災保険基金は、障害補償金として6ヶ月の賃金を支払います。

 会社側は労災医療補償金及び障害医療補償金として5ヶ月の賃金を支払わなければなりません。)

 しかし、頂いたメールの内容からすると、当該従業員の怪我の程度は重くないので、障害が認定される可能性は低いと思います。

 

4.   本件の対応について

  労災認定及び障害認定には、時間がかかるため、労災を解決する前に辞めたくないという従業員の気持ちも理解できなくはありません。

  しかし、後任の採用も既に決まったことなどを考慮すると、会社は、将来の障害認定に関し、1110日前に、当該従業員と話し合いで解決したほうが得策と考えます。

  例えば、双方が協議書を締結して、「今後、障害10級と認定されれば、会社は、法律により労動医療補償金及び障害医療補償金を支払います。」等を約定することができます。

  

  また、実務上、従業員が辞職した後、障害認定申請を行う場合、会社側の行う手続が辞職前より煩わしくなる可能性があります(例えば、提出書類が増える等)。

従って、会社は、万が一のためにも、障害認定手続に関し、管轄の労働部門と事前に意見疎通したほうがよいと思います。